2010年5月23日 (日)
妻良へのクルージング
5月1日
16時45分に家を出て車で油壺ヨットハーバーに向かう。連休3日目の土曜日で、道は少し混んでいるが、約1時間でハーバーに着く。セーリングクルーザー、ランカは、水面に降ろされていて、今回のクルージングメンバーである石井、鈴木と吉岡が海図を前にして、コースの検討をしている。挨拶をして、私の車で三崎の町へ夕食に出かける。
行き先は来来軒という中華食堂で、ヨット乗りがよく利用するそうだ。腸詰め、肉の天ぷら、肉入り野菜炒めとニラレバ炒めを注文するt店は14人しか入れない。しかも5人分は予約が入っている。滑り込みセーフで席に着けたのはラッキーである。5人の予約の主はやはりヨット乗りで、しかも10人でやって来た。彼らの大声で店は占拠されてしまった。腸詰めという料理はこの店の親父の手作りソーセージを焼いたものでとてもおいしかった。
艇に戻ってそれぞれのバースを確保して、就寝体勢に入る。連休とはいえ夜はかなり寒いのでセーターを着たまま寝袋にもぐり込む。私のバースはフォクスルでセールがいっぱい置いてあり寝返りを打つのも難しい状態である。蚊が顔の周りを飛び回り、おまけにクルーの一人が豪快ないびきを発する。ほとんど眠れないまま夜明けになる。
5月2日
昨夜買っておいたペットボトルのコーヒーを温め、おむすびをほうばって朝食を済ませ、急いで艤装をし、エンジンをかけ、もやいを解いて、いざ出航だ。時計は6時を少し回っている。
天気は晴れで風は弱い北風だ。エンジンを止めないでそのまま走る。セールは1ポイントリーフ(1段目の縮帆)、ジブは100%を揚げているが、ファーラーに巻き取られている。レースのマークに使われる南西ブイが見えてきた。油壺から南西に5マイルくらいのところに浮いている。油壺や小網代から出たと思われるヨットが視界の中に4杯くらい見える。みんな伊豆方面に向かっているらしい。他の艇もあまりスピードは出ていない。2時間くらいで三浦半島も伊豆半島も見えなくなった。相模湾の真ん中へ来たらしい。コンパスの230度を狙って艇を進める。風が弱いのでセールは手持ち無沙汰にぶら下がっている。
水平線が見えないし、島影もないので不思議な感じがする。見えるのは海鳥だけである。常に視界の中に20から30羽飛んでいる。時折トビウオも飛ぶ。
午後になれば南風に変わって吹き上がるだろうと、エンジンを頼りに走らせる。昨夜三崎のコンビニで買ったお結びを昼飯代わりに食べる。やっと伊豆半島が見えてきた。川名のゴルフ場が見えると石井が言う。少し南にコースを振って下田の爪木崎を目指そうということになり、岸沿いに走ることになった。
予想通り午後になると南風が吹いてきた。さあということでジブを出してセーリングに移った。真向かいからの風に変わり、それもかなり強くなったので再びエンジンを掛けて機帆走することになった。石井が稲取の灯台が見えてくるはずだから、よく見ているようにという。バウにいて目を凝らすが一向に灯台が見えてこない。海はかなり荒れてきてしぶきが顔にかかるので、眼鏡が白くなっているせいもある。岬の先に松が生えているところに灯台があるはずだと再び石井か言う。松は確認できたがこれが灯台だという確信を持ったものは見えない。風はさらに吹き募った。2ポイントリーフをしなければ下田に向かえないと石井が言う。ではやりましょうと答えると、このメンバーでは少し難しいかもしれないから、安全策をとって今日は稲取に入港して、様子を見ようということになり、艇は稲取港に入った。構内はさすがに風が弱く、クルー全員少し落ち着きを取り戻した。ヨットが3杯ほど舫われている間に艇を舫った。
上陸して夕食を食べる店を探すことにした。有名な魚料理点があるが、高い割にあまりおいしくないとの話を聞いているので、軽油を買いに寄った漁協の若い人に聞くと、やはりたいしたことはないという。新しくできた魚料理屋がまあまあかというのでそこに行くことにしたが、15時とまだまだ早すぎるので、ひとまず銭湯に行って、明日の朝飯と昼飯を調達してから夕食にしようということになった。銭湯は開いたばかりでお湯もきれいで気持ちよかったが、久しぶりの熱いお湯で、体が痒くなるほどであった。お湯は少し塩辛かった。出るときに買い物の店はどこにあるかと聞くと、10分ほど歩けばヤオハンがあるというので、そこまで行くことにした。開いている店を覗き込みながらゆっくり歩いて、ヤオハンに着いた。イオングループに吸収されたらしい。マクドナルドも併設されていた。スーパーというのは便利そうだが、明日の昼飯を調達するのは大変なことであることが分かった。弁当が一番手っ取り早いのだが、どの弁当も消費期限が当日限りとなっている。お結びも翌日の朝まで持つものはない。結局パンを買ってバターやジャムを塗って食べるしかない。艇の中でレトルト食品を温めて食べればもう少し選択範囲が広がるが、今日の午後の強風を経験すると、ゆれる艇内でじんばるコンロに火を入れて調理することはかなり困難と思われたのであきらめる。
艇に戻って、寝る支度をしようとしたら、毛布と枕が濡れている。フォクスルに入れてあったのだが、ハッチがよく閉まっていなかったらしい。仕方なく濡れた枕と毛布のまま寝ることとなった。幸い私の寝袋は袋に入れてあったので濡れずに済んだ。大いびきの合唱の中いつの間にか眠ってしまった。
5月3日
今日は文化の日、風は収まっている。電気の点かない紙のない町営のトイレで用を済ませ、コーヒーを淹れてパンをかじり、舫いを解いて港外に出るとすでに6時50分、弱い北風に追われながら、またエンジンを掛けて爪木崎を目指す。石井が見えて来る伊豆の町を次々と紹介してくれる。爪木崎のすぐ手前に湾があり、これを入っていくと下田の御用邸があるとの説明もあった。爪木崎を回ると下田の灯台が見えてきた。これを越えて回り込むと、下田港に入るのだそうだ。今日は下田には入らず、石廊崎を越えて妻良まで行く。海からは下田の町は見えないようだ。
今日もガスが濃く、伊豆大島は見えない。艇の左側に利島が見えている。行く手には神子本島が見えてきた。爪木崎を交わすと下田の湾が見えてくる。ここからは石廊崎を目指す。佐久根、横根を左に見て南西を目指す。

石廊崎が見えてきた。鰹島という小さな島が岬のすぐ沖にあり、その外側を回る。
石廊崎の山の上には風車がいくつも立っている。風がないわけではないのに回っていないように見える。かなり近づいてみると、いくつかはゆっくりと回っている。大金をかけて建設したものであろうが積極的に利用しているようには見えない。
そんな話をしている間に石廊崎を回航した。艇の方向を西に変え、三つ岩と呼ばれる大小取り混ぜた三角の岩が並んだ岬を横目で見ながらしばらく行くと、もう波勝崎が見えてきた。妻浦はその手前だ。思ったより早く着いた。港は以前より大きくなって、ヨットを停められる場所も変わったようだと石井が言う。静かな港内を通って、既にもやっているヨットの隣の岸壁にもやいを取る。お昼を過ぎていたので、昨日買っておいたパンを食べる。係留しているので安心してお湯が沸かせる。ドリップコーヒーを淹れた。
一休みして予約してあった民宿へ向かった。荷物を置かせてもらい、持参した燃料携行缶にガソリンスタンドから軽油を配達してもらう。たった9リットルでも配達してくれた。早速町を見物しようと散歩に出たが、町と呼ぶにはあまりにも何もない。酒屋兼雑貨屋、駄菓子屋、お菓子を少し置いておる手作り飴屋、飴屋は、2時40分になれば今日の飴が出来上がると言うので、それまで待って出来立てのべっこう飴を買った。もう5分ほど散歩すると、もう町のほとんどを見たことになる。最初に見た酒屋の向かい側になんと妻良観光協会なる看板があったので覗いてみた。2坪ほどの狭い事務所の奥から女性が出てきて町のパンフレットをくれた。南伊豆町妻良というのが地名らしい。
もう一度もやいの状態を確認しに岸壁に行ってみた。親子連れが釣りをしているので、釣果を見せてもらったら、布バケツに大きなスミイカが入っていた。えさは生きたアジだそうで、この港ではこれが主流の釣り方だそうな。艇の舫は心配なさそうだ。
小さなお風呂にゆっくり一人で入り、さっぱりしたところで、部屋で寝っころ返って夕食まで転寝をした。食事は別の部屋に用意され、石垣鯛、とびうおとさざえの生き造り船盛と黒むつの煮つけが並べられた、この外にてんぷらや茶碗蒸しなど食べきれないほどのご馳走だ。満腹で動けなくなるほど食べて、おまけにデザートまでいただいた。シェフであるお母さんの話を聞いて、この地の海産物の豊かさを知る。
部屋に戻り、いびきをどうやって交わすかを考えながら布団の位置を決める。結果、オーナースキッパーの石井が部屋の入り口に頭を置いて寝ることになった。いびきの鈴木は残り3人の足元に寝ることとなった。二泊を艇のバースで過ごしたので、畳の上で4人ともぐっすり眠った。
5月4日、
朝早く目を覚まし、艇の無事を確認しに行った。吉岡も起きてきて岸壁にやってきた。薄曇で霧が出ている。天気予報は晴れで南西の風が弱いとのことであるが、石井は、午後にはやはり吹き上がるよと言った。朝食もご馳走で海の幸を満喫した。出掛けに前夜お願いしておいたお結びの弁当を受け取って、さあ帰路に着く。8時前に妻良港を後にして、三つ岩、石廊崎、下田沖を通り、爪木崎を回るまでは風が弱く、機帆走でのんびりと北を目指す。遠く稲取の灯台がやっと確認できるころになると、やはり風が強くなってきた。しかも真後ろから吹いてきた。ワイルドジャイブしないよう神経を使って石井が舵を握る。風の弱くなった瞬間を狙ってジャイブをする。風速はメーターで25ktに達する。自艇の速度を加えると30ktを超えている。やはり2ポイントリーフは正解で、あっという間に稲取の手前に達する。今日は、伊東か熱海に停泊して、明日最終のレグを少しでも短くしておきたいと石井が言い、両方の港に電話を入れるが、どちらも本日は空きバースは確保できませんと冷たく断ってきた。さすがに連休中で多くのクルージング艇が出かけており、しかも強風から逃れてどれかの港に逃げ込む体勢をとっているらしい。仕方なくまた稲取の港に艇を向ける。 お昼過ぎに着いたので、さすがに港はまだ空いている。作業船らしい大きな船が舫われているので、これに抱かせてもらうことにして舫をとる。艇を降りようとして、この作業船のブリッジの扉にかけられた札を吉岡が見つけた。「この船は今夜0時に出港します。」と書かれている。ここを諦めて、前々日に舫った岸壁のほうに移ったが、直に舫えるスペースはもう無かった。先に舫っているセーリングクルーザーに横抱きさせてもらうことにした。バウの舫が短くて、どうしてもバウが岸に近づいてしまうが、なんとか艇を落ち着かせた。遅い昼食を艇の上で採る。民宿の女将のお結びはとてもおいしい。おかずに付けられた秋刀魚の干物を焼いたものは特別美味であった。全員満足して幸せな昼食であった。
鈴木が、灯台を見に行きたいというので散歩に同行することにした。石井と吉岡はバースで転寝をしている。浜の湯という高級旅館を横目に見て、丘を登り始めると、竜宮神社なるものがあった。更に上ると、沖から見えた松の丘の上に出た。そこにはどんつく神社というお社があり、2mくらいの男根がこちらを向いて居座っていた。その奥に灯台はあった。沖を見てみると、風は一向に収まらず海上は白波が立っている。その中を25ftくらいの小さなセーリングクルーザーが機帆走で風に向かって走っていく、さっき港に入ってきて、舫を取ろうとしていた青い艇だ。お年寄りのスキッパーだったが大丈夫かなと思いながら、その塩っ気の強さに感心した。その丘を越えて更に西の方角に降りていくと、温泉ホテル街に出た。大きな看板に稲取の年間に行われるお祭りの紹介が描かれていた。素朴な筆致がなんともかわいらしい。そこから直ぐの駐車場から海が見えた。白波の向こうに下田方面が霞んで見えている。ここから少し上がったところにスーパーヤオハンがあるので、併設されているマクドナルドに入り、PDAを無線LANにつないで、メールのチェックをする。たいした内容のメールは来ていないようだ。
ヤオハンで翌朝と昼の食事の買い物をして艇に戻った。
夕飯は、鈴木が拘る金目鯛の煮付けが食べられるということで、新しくできた魚料理の店に向かうが、残念ながら空いていなかった。また町をそぞろ歩いて、喫茶店の前まで来るとカレーライスというメニューがあり、これにみんな魅かれてこの店に入った。喫茶兼スナックといった具合の店で、半個室のような席に案内された。出されたカレーは以外においしかった。
艇に戻るともうやることが無いので早めにバースにもぐった。夜中に目を覚ますとハッチの上に誰かがいるので、起きてデッキに出てみると、石井と吉岡がもやいの取り方を調整している。フェンダーの当たる位置が安定しないらしい。後ろから取っているスプリングを少し強くしてみたら、フェンダーの当たりが決まってきた。夜になって風が更に強まっているようだ。
5月5日
クルージング最終日の夜が明けた。顔を洗って用を足しに町のトイレへ向かう。幸い行列も無く順調にことを運ぶ。そそくさと朝食を済ますと、早速舫を解いて、7時前に出航する。磁北から60度に艇を向けて、メインセールを2ポイントリーフにしたまま機走する。川名の辺りが霞みの向こうに消えてしまうと、四方に何も見えなくなった。コンパスの60度だけが頼りで、艇を進める。風は追い風だが、艇の速度のほうが速いので、ブームは中心線に寄り付いている。ブームが暴れたりワイルドジャイブをしないようにコントロールロープを付けている。
鈴木が、コーヒーが飲みたいと言う。残りのクルーが、言いだしっぺが淹れるのがいいだろうというので、鈴木がコーヒーを淹れることになった。コーヒーと柏餅をみんなでいただいた。柏餅は買うときには不評であったが、いざ食べると鈴木は二つも食べた。
11時くらいに石井が、「南西ブイが右側に見えてくるかもしれない」というので、その方向を注視しながら艇を進めるが、何も見えてこない。先ほどから見えているのは左舷の3マイルくらい先のヨットの帆らしいものだけである。これもRANKAの前方はるか先を横切って霞みの向こうに消えた。
そのうちに右舷の1マイルほどのところにヘリコプターがホバリングしているのが見えた。何か事故があったのだろうか。その後やっと南西ブイを見ることができた。すると右に左にヨットの影がいくつか見えてきた。まだ陸は見えないが、三浦半島が近づいた証拠だ。石井がこのまま進むと亀木の灯台だというので、少し南へコースを振った。やっと三崎の町の建物が見え、半島の山も姿を現してきた。諸磯の灯台も確認できたので、その北側の油壺マリンパークに向けて艇を進める。やっといつもの海に帰ってきた。
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