葉山から紀伊勝浦へ

MAPUWANAという友人のOKAZAKI32に同乗させていただきました。九州の五島列島まで向かう途中、那智勝浦までの航海記です。
2019年5月10日
6時に葉山港を出る。
薄曇で少し肌寒い。取り敢えず川名方向に向けてMAPUWANAを進める。
2台付いているGPSプロッターの一台は勝浦までの全行程、もう一台は近傍の海域を表示させる。凡そ250海里の航海の始まりである。
セールを上げてみるが、殆ど無風である。コックピットの上でブームが揺れている。
エンジンを2,000回転にして、5kt くらいで確実に距離を稼いでいく。
朝食はコンビニで買ってきたお稲荷で済ませる。
海面にはヒジキやホンダワラがたくさん流れていて、プロペラに絡むのではないかと心配になる。この心配は、直ぐに当たって、急に艇の速度が4kt くらいまで落ちる。しかし、艇長は慌てない。MAPUWANAには強力な武器が備わっている。それはコックピットフロアに掘られた直径250mmの井戸である。この井戸はコックピットとハルを貫通していて、スリーブを抜くとプロペラに棒が届くようになっている。ここから鬼の棍棒のようなイボの付いた棒で絡んだ海藻を取り除けるのである。
見慣れた稲取の港を見ながら、爪木崎を交わす。沖には利島、新島、式根島と、さらに神津島が見渡せる。石廊崎を回った頃に日が暮れ始まり、御前崎を見渡せないうちに夜となった。航海灯を灯し、艇の向きを目的地の紀伊勝浦に合わせる。オートパイロットは忠実に舳を目的地に向けてくれる。石廊崎からは本船の数が増えてくる。真っ暗な中、GPSプロッター画面に表示されるAISの情報は、クルーに安心感を与えてくれる。近付いてくる船の位置と進路が表示されるのだ。さらに暗闇の中で活躍するのはレーダーである。電波を出して、跳ね返ってくる電波を受信して反射した物体の位置を画面の地図上に表示してくれる。この二つを備えているので、つらい前方監視もそれほど苦にはならない。常に一人は前方を監視できるように交代で眠る。艇のベッドは狭く、波で横揺れもするので、寝づらいが、眠気の方が優って、結構熟睡できる。
しかし、航海はそれほど楽ではない。石廊崎を回った頃から、逆潮が強く速度がかなり落ちてきた。このため、エコノミーモードはやめてエンジンの回転数を2,500まで上げる。これで平均速度を6ktまで上げる。あまり速度を落とすと、紀伊勝浦への入港時刻が日没後になってしまい、着岸が難しくなるからだ。さらにプロペラに絡みつく海藻が多くなり、今航海では、1回を数えた。一回除去するのに平均15分はかかるから、かなりの時間損失だ。
それでもめげずに艇を進めると、伊良子の沖で朝日が上ってくる。この時期としては気温が低く寒い夜であったので、その光はとても有り難い。夜中に御前崎灯台の光を確認してからは、艇の周りには水平線しか見えなくなっている。この朝はガスが濃かったので、陸地を視認できない。
GPSプロッターに表示される目的地までの海里数を速度の6ktで割って、残り時間を計算する。どうやら入港時刻は19時を過ぎてしまいそうとなる。気を引き締めて走っていると、少し風が吹き、艇速を0.5kt 程上げてくれる。更に逆潮からもぬけられたようで、艇速が7kt迄伸びてくれている。午後遅くなって、やっと紀伊半島の山々が姿を現わす。ガスが残っているので、日本画のように荘厳な景色となっている。
ヨットの航海は目的地が見えてからの時間が長い。なかなか港の姿は見えてこない。そのうちに太陽は熊野の山に隠れてしまう。港に入る頃ほぼ夜モードとなり、岸壁は真っ暗である。すでに二杯のヨットが係留されており、頼み込んで、その間の岸壁に艇を舫う。ひと航海が終わった。

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